力士の四股名には、白鵬や玉鷲のように、動物の名前が入ることがあります。
それぞれの動物が持つ「強い」「素早い」イメージなど、良い成績を残せることを願って名付けられることがほとんどです。
そんな中で、四股名とは関係なくニックネームやキャッチコピーで動物の名前をつけられることがあります。
そして、なぜだか動物の名前がニックネームやキャッチコピーに使われる力士は出世したり、良い成績を残すというジンクスが角界にはあるようです。
そこで、今回は動物のニックネームがついた代表的な力士とそのエピソード、どういった成績を残したかを紹介します。
動物のニックネームがついた力士たちのエピソード
ウルフ:千代の富士
千代の富士がウルフと名付けられた経緯は、初めて九重部屋にやってきたときのことです。
当時の親方であった北の富士さんが、ガリガリに痩せて眼をぎょろつかせている様子を見て「腹の減った狼みたいだな」といったことから、”ウルフ”と呼ばれるようになりました。
また、別の説としては、ちゃんこ番で魚をさばいている姿を見た北の富士さんに「狼みたいだな」と呼ばれたからというものがあります。
そして、その後の活躍はご存じのとおり。
・第58代横綱に昇進
・幕内通算807勝
・優勝回数31回
・国民栄誉賞受賞
・九重部屋を継承し、数々の関取を輩出
ほかの力士がかすんでしまうほどの実績を残して、61歳の若さでこの世を去ってしまいました。
マムシ:栃錦
1950年代の戦後大相撲の黎明期に、栃若時代と呼ばれる黄金期を作り上げた功労者・栃錦は「マムシ」と呼ばれていました。
一度相手のまわしを掴むと二度と離さない執念深さと、そこから強かに仕留める様子がマムシのようだ、ということで名付けられました。
しかし、当人はこのニックネームが気に入っていなかったようで「俺はウサギと呼ばれていたんだ」と語っていたようです。
栃錦の実績は下記のとおりです。
・44代横綱に昇進
・幕内通算513勝
・優勝回数10回
・春日野部屋を承継し、栃東や栃乃和歌などの関取を輩出
・相撲協会理事長に就任し、蔵前国技館から両国国技館への移転を完遂させる
改革を次々と実現させ、現代の相撲人気につながる礎を築いた功労者といえます。
角界のサラブレッド:柏戸
昭和の大横綱・大鵬と同時期に活躍し「柏鵬時代」と呼ばれる二強時代を築いた柏戸は「角界のサラブレッド」と呼ばれていました。
ただ、サラブレッドといっても出自がエリートというわけではなく、立ち合いからおっつけで一気に突進する取り口から、サラブレッドと呼ばれたのです。
柏戸の実績は下記のとおりです。
・第47代横綱に昇進
・幕内通算599勝
・優勝回数5回
・鏡山部屋を創立し、多賀竜(優勝経験あり)らの関取を輩出
・審判部長として活躍
最終的には大鵬には後れを取りましたが、一時は大鵬戦の勝率が高く「柏鵬時代」の主役として角界をリードしました。
また、大鵬が「巨人・大鵬・卵焼き」と呼ばれるように老若男女問わず人気者だったのに対し、柏戸は「大洋・柏戸・水割り」と男性人気が高かったようです。
ポチ、ブルドッグ:北勝海
2020年現在、相撲協会の理事長を務める北勝海は「ポチ」という大変かわいらしいあだ名で呼ばれていました。
あだ名の由来は本名の「保志(ほし)」からとった、というとてもシンプルなものです。
しかし、兄弟子の千代の富士に可愛がられたためか、ともに猛稽古を積み、最終的には横綱に昇進しています。(なお、ポチと呼んでよいのは千代の富士だけ、という噂もあります)
また、1991年のロンドン場所で、そのルックスから「ブルドッグ」というニックネームが付けられました。
どれもあんまりなニックネームのような気もしますが、それだけ親しみやすい存在だったのかもしれませんね。
北勝海の実績は下記のとおりです。
・第61代横綱に昇進
・幕内通算465勝
・優勝回数8回
・八角部屋を興し、北勝力や北勝富士、隠岐の海などの関取を輩出
・第13代相撲協会理事長に就任
現役時代から努力家として知られていた北勝海は、親方となってからも誠実な人柄で、相撲協会のリーダーとして難しい局面をしっかりとコントロールしています。
北海の白熊:北天祐
80年代に活躍した名大関・北天祐は、出身地の北海道と、均整の取れた体と人間離れしたパワーから「北海の白熊」と呼ばれていました。
握力は両方とも100kg近くあるなど、北天祐のパワーは当時からしても規格外の存在で、のど輪など腕力を活かしたパワフルで見ごたえある取り口と甘いマスクで人気の力士でした。
北天祐の実績は下記のとおりです。
・大関在位44場所
・幕内通算514勝
・優勝回数2回
・二十山部屋を興し、露鵬などの関取を輩出
甘いマスクと豪快な取り口で人気を博した北天祐ですが、残念ながら45歳の若さで亡くなっています。
なお、娘さんは2020年に貴景勝と結婚しています。
南海のクロヒョウ:若嶋津
80年代に活躍した名大関・若嶋津は、南国の種子島出身で、浅黒い肌をしていることから「南海のクロヒョウ」と呼ばれていました。
クロヒョウのニックネームのとおり、ソップ型の細身ではありましたが、力強い四つ相撲を武器に優勝するなど、実績も十分。
さらに、北天祐と並んで角界の美男子としても人気で、歌手の高田みづえさんと結婚するなど、プライベートでも成功(?)しています。
若嶋津の実績は下記のとおり。
・東大関に昇進
・幕内通算356勝
・優勝回数2回
・松ヶ根部屋(その後の二所ノ関部屋)を興し、松鳳山などの関取を輩出
美男子で有名な若嶋津は人気も高く、下記のエピソードも存在します。
・ダイヤがあしらわれた1億5千万円の化粧まわしを贈られる
・人気漫画「キャプテン翼」の人気キャラの名前に起用される
次の動物ニックネーム力士は誰だ?
角界には昔から動物のニックネームがつく力士は出世するというジンクスがありますが、最近はニックネームが付くような力士はあまり見られません。
もし、今後動物のニックネームで呼ばれるような力士が出てくれば、大横綱として君臨するかもしれませんね!